ラウドネスについて

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今回は人間の音の認知に関わる,ラウドネスに関するお話をさせていただきたいと思います.

ラウドネスと音圧レベル

今回の記事では音量に関連する言葉の「ラウドネス」と「音圧レベル」の二つを中心に展開させていただきます.

音圧レベルは音の物理的なエネルギーを表す言葉として用いられます.

今回導出する式に関しては割愛させていただきますが,簡単に説明すると入力信号の音圧から得られるエネルギーに当たり,単位はdBで表されます.

対して,ラウドネスは人間の聴感上での音の聞こえ方を表す言葉として用いられます.なお,ラウドネスは「音の大きさ」と呼ばれることもあり,単位はsoneで表されます.

soneとは,1kHzの純音の音圧レベルが40dBの音を1soneとし,それを基準とした,聴取者が感じる音量の比率を尺度として表現されます.例えば聴取者が1soneの音に対して2倍の音量になったと判断するラウドネスは2soneとなります.

つまり音圧レベル(dB)は物理的に決められた定量的な値であるのに対し,ラウドネス(sone)は人間の聴覚による定性的な要素を含めて定められた値となります.

ちなみにラウドネスと少し似ている事象として,聴感上での音の高さの認識に関係するメル周波数も面白いのですが,こちらの説明は別の方に譲らせていただきます.

soneとdBの関係性をfig. 1に示します.

fig. 1 ラウドネス(sone)と音圧レベル(dB)の関係性

fig. 1より,中心周波数が1kHzのものは,音圧レベルが10dB上昇するごとにラウドネスが2倍になっていることが見て取れると思います.

ラウドネスは身近なところだと,テレビやラジオなどの放送音に対し,番組間でのラウドネスの相違を削減する処理が行われている.

ちなみにテレビで操作できる音量はラウドネスはあまり関係しておらず,テレビに搭載されているスピーカーが出力できる音の最大値を100としているようです.

周波数と聴感の関係

さて,ここまでで音圧レベルとラウドネスの関係性に関して話を進めてまいりましたが,ここから周波数を含めた関係性について話をしていきたいと思います.

まずはこちらの二つの音声をお聞きください(音量にご注意ください)

正弦波A(1kHz)
正弦波B(4kHz)

おそらくほとんどの方が正弦波Aより正弦波Bの方がうるさく聞こえたと思います.しかしこの二つの音声の音圧レベルはほとんど等しいのです.

このふたつの音声の波形をfig. 2に示します.

fig. 2 1kHzおよび4kHzの正弦波の波形

fig. 1を見てお気づきの方も多いかと思いますが,周波数によってラウドネスと音圧レベルの関係性に違いがある,つまり,同じ音圧レベルであっても周波数が異なることでラウドネスが変化するということが言えます.

つまり,人の聴覚では本来同じ音圧レベルのものでも,周波数が変化することで聴感上音量が変わったと認識してしまうということです.

この周波数と音圧レベルの関係性を表したものとして等ラウドネス曲線があります

等ラウドネス曲線は任意の周波数同士のラウドネスが等しく聞こえる時のそれぞれの音圧レベルを結んだ曲線であり,基準として1kHzの音圧レベルを用い,その値をphonとして定義します.

例えば,8kHzの純音の音圧レベルが30dBの時のラウドネスは1kHzの純音の音圧レベル20dBのラウドネスと等しく感じるため,8kHz,30dBの純音は20phonと言えます.

上記の等ラウドネス曲線をfig. 3に示します.

fig. 3 純音のラウドネス曲線

fig. 3より,1kHz以下の周波数の純音に対して,人の耳では聞き取りにくいと言えます.

40phonを例にとると,250Hzの純音では1kHzの純音と比べて10dB分増幅させないとラウドネスが等しいとは認識されません.

しかし一方で,低周波数の純音は1kHz以上の周波数の純音と比べてphonの上昇に必要な音圧レベルが少なく,ラウドネスの上昇は感知しやすいと考えられます.

あの,fig. 3において新規格,旧規格とありますが,これは元々は1957年に等ラウドネス曲線が定義されたのですが,この定義を行う際に大きな誤差が含まれていることが後々判明し,2003年に新たに定義されたという背景があるため,このような表記となっています.

この等ラウドネス曲線を用いることで例えば,広帯域にわたる音声から低周波数領域の音声を聞きたい際にどのような補正をかけるかの検討をする際の要素になりますし,身近なところで言うと曲のイコライジング(周波数帯ごとに音圧レベルを調整する行為)をする際の参考にできると考えられます.

おわりに

今回は人間の音の認知に関わるラウドネスについてお話をさせていただきました.

音関連の研究にはこのような人間の認知に関わる題材も多くありますので,そちらに興味を持っていただくお手伝いができていれば幸いです.

参考

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jasj/73/12/73_765/_pdf
https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2003/pr20031022/pr20031022.html
https://www.onosokki.co.jp/HP-WK/c_support/newreport/noise/souon_3.htm
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